映画のはなし

観た映画のメモ

「愛のむきだし」を観た

2016年、一発目に観た映画。目当ては満島ひかりの演技だった。

この目当ては達成され、満島ひかりの演技はとても威力のあるものだった。

ところが、この映画において演技が凄かったのは彼女だけではなかった。

 

あらすじ:

敬虔(けいけん)なクリスチャンの家庭に育ったユウ(西島隆弘)は、ある出来事を境に神父の父(渡部篤郎)に懺悔を強要され始める。父の期待に応えようと、懺悔のために毎日罪作りに励むうちに罪作りはエスカレートし、いつしかユウは女性ばかり狙う盗撮魔となっていた。そんなある日、運命の女ヨーコ(満島ひかり)と出会い、生まれて初めて恋に落ちるが……。

 

あらすじや物語の構成は今回書きたいことと関係ないので、その辺についての言及はしませんが、観ていただけると分かる通り、ちょっと変わった物語になっているのかなと思います。上映時間も4時間と大変長尺なので、その辺からもこの映画の特殊さが伝わるかと思いますが。

 

さて、今回書きたいことは、満島ひかりはじめ出演陣の演技の凄さについてである。

といっても、ただ単に「すごいと感じました」というだけのことなので、大して語ることもないのですが。

 

主演のユウ君役を演じたのは、AAAというダンスボーカルユニットのメンバーなのですね。西島隆弘。何となく見たことあるお顔だと思っていたけど、なるほどそういうことか。そして、彼にとってこれが初の出演作品であるらしい。初出演・初主演。これ、この事実にまず驚くのです。だって、彼の演技は初出演とは思えないほど上手だったから。活き活きしていたというか、フレッシュだったというか。とても心躍るような演技だった。上手く言えないんだけど。ただ、強く印象に残っているのはこのフレッシュさなのであって、それ以外のユウの印象はあまり残っていない。もっと多様な側面が印象に残っていてもいいはずなんだけど。彼にもっともっと演技力があれば…(?)。

 

そして、満島ひかり演じるヨーコの登場には胸が高まりました。どんな演技を見せてくれるのだろう。「川の底からこんにちは」とこの作品を見て思ったのは、彼女は表情と声色の変化がハンパない。わざとらしくなく、いわゆる演技っぽさも出さず、且つ大胆に大きくそれらを変化させる力をもっている。恋をしているかわいらしい女子高生の時は本当に恋しているっぽくみえて、大変かわいらしい。かと思えば、色々なものに対して反発する攻撃的な女子高生の時は本当に荒々しく、またかっこよくも見えたり。かと思ったら、新興宗教に洗脳され、何かが宿ったような、意識がこの世にないような女子高生の時は、その狂気ははっきりと体現され、そこからはある種の神々しささえ感じた。一つの作品でこんなにも沢山の顔を表現できるのは彼女の力なのだろう。とくに多様なのは、表情と声色。

そんな彼女の演技で、「うわあこれすげえ…」って最も感じたシーンは、長台詞のシーンと、その直後の呆然としているシーン。彼女自身もどこかのインタビューでこのシーンが最も印象に残っていると言っていた。特に呆けている時の表情は、本当に何とも言えない表情。何かものすごく心に響くのに、全く言語化することができない表情。何も含んでいない感じもするし、あらゆるものを含んでいる感じもする。混沌が渦巻いて鎮座しているというか、何というか。

 

最後に書いておきたいのは、安藤サクラという女優さんの演技について。コイケという女の役を演じていた。この女優さん、すごいですね。謎めいた感じ、妖艶な感じ、不気味な感じ、しっかりしててまじめな感じ、悲しい感じ、嫌な感じ、狂った感じ、普通の女の子のような感じ、などなど、ありとあらゆる人間の「質感」を彼女の演技は表現できているように感じた。その時々に、そのシーン毎に必要とされる「質感」が、必要とされるレベルを超えて、えぐいくらいに表現されていた。圧倒的な存在感。でも、それは他のものを邪魔しない。演技の怪物だと思いました。

…いや、なんかどれだけ言葉を尽くしても彼女の演技をここに表すことができない気がする。その実力により、メディアや世間は彼女に注目し始めている。今後、必ず彼女への注目はますます熱を帯びていく。それに追いつくように、彼女を語る言葉も今後考えていかないといけない。とにかく今、私なんかの圧倒的に力が不足している言語力では、彼女の演技を語ることはできない。

 

以上、3人の女優さん俳優さんの演技について感じたことをまとめてみた。

なお、本作「愛のむきだし」には、上に挙げた3人以外にも素晴らしい演技をなさっている女優さん俳優さんが沢山おられます。もしこれからご鑑賞される方は、是非その辺を楽しみに、ご覧になってみてください。