映画のはなし

観た映画のメモ

「恋におちて」を観た

映画やドラマやアニメを観る上で、演技力というのは僕にとって非常に楽しみなポイントだ。この「恋におちて」は、主演二人による極上の上の上の演技力が味わえる映画だったので、僕にとってはもう脚本とか映像とかはどうでもよかった。兎にも角にも、この映画の味は演技力に凝縮されていたと僕は感じた。

 

以下あらすじ。

 いくつになっても変わることのない恋愛感情を、デ・ニーロとストリープの名優を共演させ、実に自然なムードで展開するロマンチックな大人の純愛(不倫?)作品。クリスマス・イヴのニューヨークの書店で運命的な出会いをしたフランクとモリー。ふたりは同じ通勤列車に乗り合わせた事をきっかけに急速にお互いを意識し始め、デートを重ねる度に精神的に魅かれ合って行く。だが、それぞれには申し分のない家庭があり、いけないと思いながらも互いの感情を抑えられなくなってきた頃、双方の家族に浮気がばれてしまい……。

(解説・あらすじ - 恋におちて - 作品 - Yahoo!映画 より、2015.11.22現在)

 

あらすじには「(不倫?)」って書いてあるけど、ほんとに「?」って感じ。つまり、不倫なのか不倫じゃないのかなんとも言えない。カラダの関係がないってのがややこしさの根源だね。キスはしてるけど。えええ、どんなんだろう、僕は経験値が少ないからよく分からないよ;

まあとりあえずね、分かりやすいヤったヤラないってのがなくて恋愛における心の機微が描かれている映画だから、僕が大好きな「演技力」なるものがものをいう映画なんですよってことを言いたかった。

 

メリル・ストリープロバート・デ・ニーロ

この映画のヒロイン役を演じている女優ストリープと、その浮気相手役を演じるデ・ニーロ。この二人の演技がすごかった。二人が演技で何気なく放つ細やかな一挙手一投足、またそれによって醸し出される深い味は、本当にこの二人にしかできないんだろうなと感じさせる。

特に目立って(しかし決して派手ではなく)すごいのがストリープの演技。顔のアップとか、細かいセリフの言い方とか、本当にそう感じているんだろうな、そう思っているんだろうなって思っちゃうくらい、感情が伝わってくる。観ている側の「女優さんが演技している」という感覚を一滴も残さず消し去ってしまうように。僕は彼女(の演技)を見て「少女のように恋をした大人の女性」を、そしてその醜さと美しさを存分に感じ、味わわせてもらった。

また、そんなストリープの演技がこんなにも遺憾なく発揮されたのは、デ・ニーロという俳優の、これまたすごい演技力が放つ深い味によるものだと思っている。離れる時の寂しそうな、しかし紳士的な表情や仕草や、再開した時の子どもっぽさすら感じさせる喜んだ表情は、「久しぶりの恋愛を心の底から楽しむ大人の男性」を体現しているみたいだった。でももっとすごいと思ったのは、デ・ニーロの演技はほぼストリープを引き立てるものになっていたということ。あくまでもストリープが花、で。ニーロはそれをきれいに見せるための根・茎になっていた。デ・ニーロは彼女との演技の相性がいいことを語っているらしいけど、確かにその通りだと思う。衝突や対立が全く感じられず、ほんと心地いい調和って感じだった。

 

とにかく二人の演技がすごいと感じた映画だったんだよね。でも、ストーリーの良さはいまいちぴんとこなかった。僕はまだ結婚もしてないどころか恋愛経験だってほとんどないし、だから、あらすじにあるような「いくつになっても変わることのない恋愛感情」が分かるほど恋愛や人生において深みを持っていない。

いつかこの映画を、''感情が伝わってくる演技''だけじゃなくて、その''伝わってくる感情ごと''含めて理解できる日がくるのだろうか。

 

おわり。